見えない星

風は吹かないのに

蒸したような暑さ。

それなのに空は、雲一つ無い青さだ。


無性に腹が立つこの感じも、

背中を伝う汗も、

そんなに嫌いじゃないから困る。

「笑ってるほうが可愛いよ」とはよく聞く言葉だけれど、

たとえばわたしとか、笑うとあんまり可愛くない。

方頬にだけあるえくぼだったり、笑ったときにしかできないしわだったり。


だけどわたしは今日も笑おうと思う。

「笑ってるほうが可愛くなくとも、笑ってるほうがずっと楽しいよ。」って思える、

そんな世界にいるわたしだから。

食事をしている、気さえする。

紙をちぎって、よく噛んで、飲み込むように。
胃ではない何かが、満たされていくような感覚。

もう活字なしでは、生きてゆけない体。

紙についた折れ目を消す方法をわたしは知らない。

手順を間違えてできた折れ目。

思い描いていたのはこんな、くしゃくしゃな紙切れじゃない。

消してしまいたいのに、

あの日の過去を洗い流す方法をわたしは知らない。


折れ目も過去も、なくなってはくれないらしく。

完成にはまだ、程遠い。

「たいせつなことは、目では見えない」
星の王子さまという本の、王子さまの台詞にこういうものがある。

もしもわたしがこれを先生だとか友人だとかに言われたならば、真に受けることはないだろう。
ずいぶん昔に、ありきたりで安っぽい言葉だと、捨ててしまったものだったからだ。

だけどもしあなたが星の王子さまを読んだとき、
この言葉のみならず、他の一文一文が静かに胸に響くことになると思う。

自分が少しずつ大人になっていって、
それと同時に捨ててしまったり、忘れてしまっていたこと。
ほんとうに正しいことなの？と、訴えかけてくれる、そんな素敵な本だ。

わたしは、そんな王子さまが教えてくれた、
教えなおしてくれた、大切なことを忘れずに、文字書きになりたいと思った。

見えない星
目には見えないけれど、そこにあるもの。
一生懸命見ようとすることをやめなければ、いつか、見える日が来る。

その星を今探しています。